社会教育情報紙「コラボ」令和7年度第2号 令和7年12月10日発行 調布市教育委員会 【1頁】 調布市中学生海外体験学習事業 調布市中学生海外体験学習事業は、中学生が、外国の文化、生活、価値観等を直接肌で感じることで、 国際的な視野やコミュニケーション能力を得て、国際社会で主体的に行動できるグローバルな人材へと 成長する契機とすることを目的として実施しています。事業初年度となる今年は、令和7年8月16日 (土)から24日(日)までの9日間、調布市立中学校の2年生20人がオーストラリア・パースを訪れました。 生徒たちは、到着した翌朝に現地ホームステイファミリーと対面し、最終日までホームステイファミリーと過ごしました。 パースを含む西オーストラリア州は、オーストラリアの中でも特に移民人口の割合が多い地域であり、ホームステイファミリーの ルーツも様々です。文化の違いに戸惑う生徒もいましたが、誰も体調を崩すことなく無事に過ごすことができました。 また、現地の学校に三日間通学し、パースの学生たちとも交流を深めました。学校では、お世話役となる現地校の生徒「バディ」と 一緒に授業を受けたり、休憩時間を過ごしたりしました。最終日には、日本の文化を現地の学生に発表するプログラムもありました。 生徒たちは皆、出発前から準備を進め、茶道やソーラン節,お祭りについて実演を交えながら現地の学生に紹介しました。 【2頁】 コラム “できない”を責めない学び方の支え方 白百合女子大学准教授 涌井 恵 「苦手」ではなく「今のやり方が合っていない」 家庭で子どもが宿題に向かう姿を見て、「どうしてこんなに時間がかかるの」「前にもやったのに」と 感じることはありませんか。けれども、学びのつまずきの多くは「やる気のなさ」ではなく、 「その子に合うやり方が見つかっていない」ことに原因があります。 たとえば、漢字を何度も書いて覚えるのが苦痛な子がいます。その場合、「書くのが苦手」 なのではなく、「その方法では記憶に残りにくい」タイプかもしれません。声に出して読 みながら書く、絵とセットで覚える、手書きアプリを使うなど、少し方法を変えるだけで 理解が深まることがあります。 「うまくいかないとき」にどう寄り添うか 子どもが「できない」と感じているとき、大人が「何回言ったら分かるの」と言葉をかけて しまうと、子どもは自分を責め、挑戦する気持ちを失ってしまいます。大切なのは、「どこ でつまずいているか」を一緒に探すことです。 たとえば、文章題が苦手なら、式を立てる前にイラストを描いて状況を整理する。漢字が覚 えられないなら、部首や部分的なパーツごとにカードを作り、形の特徴を遊びながら探す、 組合せる、など。家庭学習は「できた」「できなかった」を評価する場ではなく、「どうす ればできるようになるか」を一緒に考える時間にできるといいですね。 「その子らしい学び方」を見つける手伝い 私たちはつい「得意・不得意」で子どもを分類しがちですが、実際には学び方は状況や課題 によって変わります。集中できる日もあれば、疲れてうまくいかない日もある。そんな揺ら ぎも含めて、「どうすればうまく学べるか」を試行錯誤する力こそ、これからの学びに必要 な力です。 たとえば、漢字練習がうまくいかないとき、「もっと書きなさい」と言いたくなるところを 少し立ち止まり、「どうやったら覚えやすいかな?」と一緒に考えてみましょう。声に出す、 体を動かす、カードを使うなど、感覚を変えるだけで、ぐんと覚えやすくなることがあります。 中学生でも同じです。ノートまとめが苦手な子は、色分けや図を使って整理するのが合うか もしれません。読むのがつらい子は、音声教材や動画を使うのも立派な学び方です。大切な のは、「みんなと同じやり方ができない」ことを弱点とせず、「自分に合った方法を見つける チャンス」として応援することです。 親の役割は“教える人”ではなく、“見つけるのを支える人” 書ける・書けない、できる・できないよりも、「今日は工夫していたね」「その方法、いい ね」と、過程を認めてあげることが、子どもの意欲を支えます。子どもが「これならできる!」 と感じた瞬間こそ、学びの力が一番伸びるときです。 子どもが自分に合った学び方を見つけることは、単に勉強の効率を上げるだけではありませ ん。自分を理解し、違いを認め、仲間と協力する力を育てることにもつながります。学校で も家庭でも、子ども一人ひとりが“のびのびと学び方を選べる環境”を、ぜひ一緒に作って いきましょう。 わくい めぐみ 白百合女子大学准教授。公認心理師、臨床心理士、特別支援教育士SV。発達支援や臨床発 達心理学を専門とし、子ども一人ひとりの「学び方」に合った支援や環境づくりを研究。 のびのびと学べる場づくりに取り組んでいる。 著者のnote「ふろしき忍者修行日記」では、いろいろな学び方を紹介しています。 ※第2号は例年11月に発行しておりますが,掲載内容調整のため12月発行としました。 発行 調布市教育委員会教育部社会教育課 郵便番号182-0026調布市小島町2-36-1 電話 042-481-7488  Eメール syakaiky@city.chofu.lg.jp 刊行物番号2025-144